わたしは しゃべれない 歩けない
口が うまく うごかない
手も 足も 自分の思ったとおり うごいてくれない
一番 つらいのは しゃべれないこと
言いたいことは 自分の中に たくさんある
でも うまく 伝えることができない
先生や お母さんに 文字盤を指でさしながら
ちょっとずつ 文ができあがっていく感じ
自分の 言いたかったことが やっと 言葉に なっていく
神様が 1日だけ 魔法をかけてしゃべれるようにしてくれたら・・
家族と いっぱい おしゃべりしたい
学校から帰る車をおりて お母さんに 「ただいま!」って言う
「わたし、しゃべれるよ!」って言う
お母さん びっくりして 腰をぬかすだろうな
お父さんと お兄ちゃんに 電話して
「琴音だよ! 早く、帰って♪」って言う
2人とも とんで帰ってくるかな 家族みんなが そろったらおしゃべりしたい
お母さんだけは ゲームがへたやから 負けるやろうな
「まあ まあ 元気を出して」ってわたしが言う 魔法が とける前に
家族みんなに「おやすみ」っていう  それでじゅうぶん

産経新聞に掲載された「夕焼けエッセー」を転載させてもらった。

事故の後遺症で肢体不自由となって言葉さえ失った12歳の少女の文章を、読みながら、入力しながら感動し、家庭の温かさと共に「もっともっと頑張らねば」とのメッセージだと思ったので・・。